概要

私たちの「自分」を形作る記憶は、脳内でニューロンが織りなす複雑な電気信号のバトンリレーによって成り立っています。五感から入った情報は海馬で選別され、側頭葉などの保管場所に定着。この過程で、感覚記憶短期記憶長期記憶といった様々な分類がなされ、特に嗅覚プルースト効果に見られるように、感情と結びつきやすく、記憶に強く残る特性を持っています。

しかし、記憶は常に確かなものではありません。アルツハイマー型認知症ではアミロイドβというタンパク質がニューロンを破壊し、記憶が失われていきます。また、フィニアス・ゲイジの事例や高次脳機能障害が示すように、脳の損傷は性格や行動にまで影響を及ぼすことがあります。さらに驚くべきは、臓器移植後にドナーの記憶や嗜好が受け継がれるとされる記憶移転の可能性や、サヴァン症候群のように脳の損傷が隠れた才能を開花させるケースです。

そして最も衝撃的なのは、エリザベス・ロフタス教授の実験が明らかにした虚偽記憶の存在です。信頼できる情報源からの暗示や誘導によって、存在しない出来事をあたかも体験したかのように記憶してしまう現象は、マクマーティン保育園裁判のような悲劇的な冤罪を生む可能性すら示唆しています。この動画では、記憶の神秘的なメカニズムから、その脆く不確かな性質までを深く掘り下げ、私たちの「記憶」という存在に新たな視点を提供します。