概要

近年、世界中でSNSに対する規制の動きが加速しており、その背景には情報セキュリティ、若者の精神衛生、そして国家間の情報戦略が複雑に絡み合っています。特に注目されるのは、中国発の動画共有アプリTikTokに対するアメリカの厳しい姿勢です。バイデン政権下でTikTokの事業売却を求める法律が成立し、一時的なサービス停止騒動も発生しました。これは、ByteDanceが中国政府の指示のもと、個人情報を収集し、世論操作に利用する可能性が指摘されているためです。

アメリカ政府は、TikTokの元従業員からの情報や、過去にPinduoduoなどの中国製アプリでマルウェアが仕込まれ、個人情報が不正に取得された事例を根拠に、国家安全保障上の脅威と見ています。中国には国家情報法が存在し、企業が政府の情報収集活動に協力することを義務付けているため、ByteDanceが悪意を持たなくとも、中国政府の要求には逆らえない状況にあるのです。この懸念はアメリカだけでなく、インド、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリアなど多くの国で共有され、政府支給端末でのTikTok利用禁止などのSNS規制が導入されています。

一方で、SNS規制の動きはTikTokに留まりません。オーストラリアでは16歳未満の子供のSNS利用を禁止する法律が承認され、フランスやアメリカの複数の州でも、若者の精神疾患増加や有害なコンテンツへの露出を防ぐ目的で、年齢制限やアルゴリズムによる自動フィード機能の制限が導入されています。これらの動きは、SNSが持つフィルターバブル効果やデマ情報拡散のリスクに対する懸念の表れと言えるでしょう。日本でも選挙期間中のデマ情報対策としてSNS規制の議論が始まっています。

しかし、メタ社のようにファクトチェックをユーザー評価に委ねるなど、規制を緩和する動きも一部で見られます。また、中国ではグレートファイアウォールと呼ばれる厳格なインターネット検閲システムにより、GoogleYouTubeなど多くの海外サービスが利用禁止されており、自国企業の育成と世論操作のために情報が徹底的に管理されています。これらの事例は、SNSが単なる娯楽ツールではなく、国家の安全保障や社会のあり方を左右する重要なインフラとなっていることを示唆しています。世界中で繰り広げられる情報戦争の現状と、私たちの情報環境がどう変化していくのか、その動向から目が離せません。